3. 最終考察
ほぼ全ての都道府県の合格発表が終わる夕方に、今回の本試験の考察(今回の試験の総括と、来年に向けての対策など)について書かせて頂きます。
残っていた広島県の合格発表のデータと、新潟県の追加合格に伴うデータ修正も反映しました。(12月2日)
●まずはじめに
まずは、1年間本当にお疲れ様でした。受験を決意してから、合格発表までの道のりは本当に大変だったかと思います。ほとんどの方にとって仕事を抱えながらの受験でご苦労が多かったとお察しします。
また、合格された方は、本当におめでとうございます。サイト管理者として、心よりお祝い申し上げます。
辛い努力の上で勝ち取った栄冠は、これからの自信にもつながると思います。
今後ますますのご発展と、ご活躍をお祈り申し上げます。
一方、残念だった方にも、心から健闘を称えたいと思います。今この文章を読んでくださっている方は、相当勉強されてきてがんばった方だと思います。
以下、私から来年への取り組みについてアドバイスさせていただきます。
●予想について
近年、合格率がおおむね15%から20%の間で推移する中で、毎年できるだけ的中する可能性が高い予想点を計算してきました。
前回、13.1%という史上最低の合格率を記録していることから、今年も20%までは上昇しないだろうという中で予想してきましたが、2010年以来7年ぶりの20%超えの高水準の合格率約21.4%(去年の1.6倍)となりました。
その影響が大きく、介護支援、医療福祉ともに的中させることができませんでした。せっかく回答データの収集にご協力頂いた方々をはじめ閲覧された方々には、お役に立てず本当に申し訳なく思っています。
直近の8年間の合格率の傾向は以下の通りです。
2010年 20.5%
2011年 15.3%
2012年 19.0%
2013年 15.5%
2014年 19.2%
2015年 15.6%
2016年 13.1%
2017年 21.4%(見込み)
合格率は来年以降再び戻る可能性もありますが、受験条件を厳しくしている影響から、今後は合格率は比較的高めに推移することも予想されます。
●合格するために、どのくらいの勉強が必要か
先日、合格基準が発表されて、どれくらいの勉強をすれば合格水準に到達するのかが分かりましたので、合否に重要な問題を6問選んで解説します。
以下の6問は、各分野ごとに難易度の低い順番から並べたときに合格基準点の前後にある問題で、かつ合格者と不合格者で正解率の差が大きい問題で、合格への試金石となる問題です。
これくらいの難易度(正解率)の問題を各分野3問中2問以上正解できれば、今回の合格水準に到達できたといえます。
【介護支援分野】
問題13 第1号被保険者のうち,特別の事情があると認められない保険料滞納者への措置として正しいものはどれか。3つ選べ。
1. 保険給付の支払方法の変更 ○ 2005年 問題12ほか
2. 訪問看護等医療系サービスの医療保険制度への移行 ×
3. 保険給付の額の減額 ○ 2004年 問題3ほか
4. 保険給付の全部又は一部の支払の一時差止 ○ 2004年 問題3ほか
5. 区分支給限度基準額の減額 ×
問題16 介護サービス計画作成のための課題分析標準項目として正しいものはどれか。3つ選べ。
1. 二親等以内の扶養義務者の現住所 × 2011年 問題18
2. 生活保護受給の有無 ○
3. 前年度の課税所得金額 × 2011年 問題18
4. 認知症である老人の日常生活自立度 ○
5. 介護認定審査会の意見 ○
問題19 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)で定める基本方針に示されている内容として正しいものはどれか。3つ選べ。
1. 居宅における自立した日常生活への配慮 ○
2. 利用者自身によるサービスの選択 ○
3. 保険給付の重点的な実施 ×
4. 公正中立 ○
5. 高齢者虐待の通報 ×
【保健医療福祉サービス分野】
問題44 訪問看護について正しいものはどれか。3つ選べ。
1. 介護保険の訪問看護費は,看護小規模多機能型居宅介護と併用して算定できる。 ×
2. 看護師は,臨時応急の手当を行うことができる。 ○ 2008年 問題44ほか
3. 訪問看護事業所の開設者は,医療法人及び社会福祉法人に限られる。 × 2007年 問題9ほか
4. 急性増悪時に主治医が交付する特別指示書の有効期間は,14日間である。 ○
5. 看護体制強化加算は,緊急時訪問看護加算,特別管理加算,ターミナルケア加算の各々について一定の要件を満たした場合に認められる。 ○
問題45 次の記述について適切なものはどれか。3つ選べ。
1. 介護予防訪問看護は,介護予防・日常生活支援総合事業の介護予防・生活支援サービス事業に含まれる。 ×
2. 居宅療養管理指導は,管理栄養士や歯科衛生士も行うことができる。 ○ 2002年 問題6ほか
3. 30日以上継続して短期入所療養介護を利用することについてやむを得ない理由がある場合には,30日を超えて短期入所療養介護費を算定できる。 × 2012年 問題45ほか
4. 看護小規模多機能型居宅介護の運営推進会議は,利用者の家族や地域住民の代表者も構成員となる。 ○
5. 介護予防訪問リハビリテーションを介護予防サービスに位置付ける場合には,主治医の指示があることを確認する。 ○ 2010年 問題19より推測
問題51 介護保険における住宅改修について正しいものはどれか。2つ選べ。
1. 取付工事が必要なく据え置いて使用する手すりは,住宅改修費の支給対象にはならない。 ○ 2004年 問題56ほか
2. 居宅介護住宅改修費は,介護支援専門員が必要と認める場合に支給される。 ×
3. ベッドサイドで排泄するためのポータブルトイレの設置は,住宅改修費の支給対象となる。 ×
4. 引き戸等への取り替えにあわせて自動ドアを設置する場合は,自動ドアの動力部分の設置は,住宅改修費の支給対象にはならない。 ○ 2013年 問題54より推測
5. 同一住宅に複数の要介護者が居住する場合は,同時期にそれぞれが住宅改修費の支給を申請することはできない。 ×
ご覧いただいたように、今年も過去問の焼き直しが多く出題されています。
まず、介護支援分野ですが、問題13、16、19が合否を分けた問題です。
このうち、問題13、問題16は過去問の知識で正解できます。問題19は過去問だけでは解くのが厳しい問題です。
次に、保健医療福祉サービス分野は、問題44、45、51が合否を分けた問題です。
このうち、問題51は過去問の知識で正解できます。問題45は過去問の知識で二択まで絞れます。問題44問も過去問の知識で三択まで絞れます。
このように、過去問の知識だけでも、ほぼ合格できる水準まで到達することができます。これは、昨年の合格率のような13%という極端な年を除けば、毎年ほぼ同じ傾向です。
ただし、過去問だけでは体系的な理解に欠け知識の定着が難しいため、できれば500ページ前後の参考書の読んで理解を深めたいところです。
●どのような勉強が良いか
前述の通り、500ページ前後の参考書をよく読んで理解を深めるとともに、過去問で出題された問題は確実に暗記することです。
この時期、よく新しい参考書を何冊も買われる方もいらっしゃいますが、今回の受験でお使いになられた参考書があれば、まずそちらを確実に読んで物にしてください。
不合格された方の勉強方法をお聞きすると、大部分が参考書の数が足りなかったというより参考書を深く読んでいなかった、という場合の方が圧倒的に多いです。
この「参考書を深く読む」というのは、人によって随分感じ方が違うのですが、「深く読んだ」といえる簡単なチェック方法は以下の通りです。
(1) 参考書の巻頭の目次を見て、各章(節)がどういう内容か頭に浮かぶこと。具体的に、各章(節)にある重要単語がいくつか思い浮かぶこと。
(2) 参考書の巻末の索引を見て、掲載されている言葉の9割以上を、多少不正確ながらも他人に理解できる程度に説明できること。
(1)(2)が出来ていれば、おおよそ「深く読んだ」といってもいいと思います。少なくても、ケアマネ試験の対策上は十分な達成水準です。
あとは、できるだけ細かい単元に区切って、参考書と過去問(又は問題集)を行き来してください。
この試験は、仕事をされながら勉強されている方が多く、どうしても1日に割ける勉強時間が限られてしまうため、1冊読み終わるのに長期間を要してしまいます。
たとえば、「12月~3月は参考書を読んで、4月からは過去問(又は問題集)」というようなプランを立ててしまうと、4月の時点では12月に読んだ内容を忘れてしまいます。
人間、使わない知識は忘れます。過去問(又は問題集)を使って、覚えたばかりの知識を使ってください。
例えば、以下のような勉強のやり方です。
(1) 12月10日までは介護支援分野の「保険給付」について参考書をしっかり読む。
(2) 12月13日までは介護支援分野の「保険給付」について過去問(又は問題集)をやる。
(3) 12月15日までは過去問(又は問題集)で不正解だった問題に該当する箇所の参考書を中心に読み返す。
一つ注意しなければならないのは、以前やった単元を忘れないように1ヵ月以内に復習することです。手帳かカレンダーに復習する日を復習する単元名とともにメモしておきましょう。
これは2ヵ月以降も同様です。1ヵ月に1回は、これまで学習した単元を復習する日を作ってください。できれば、まとまった時間が取れる休日がよいでしょう。
来年、合格されることを切に願っております。
今後とも、当サイト及び姉妹サイトをよろしくお願いいたします。