前に、介護保険制度以前の老人福祉制度における措置制度の問題点について学習しました。
介護保険制度では措置制度の反省を生かし、利用者本位の介護サービスの提供を基本理念に位置づけ、様々な介護サービスが提供されることになりました。

しかし、人間は選択肢が多くなると、かえって選べなくなりがちです。
例えば、パソコンに詳しくない人がパソコンを買おうと仕様を見ても、どれが良いか分かりません。数値が高ければ高性能とも限りません。
メールしかやらない人が、プロ御用達の動画編集用のパソコンを購入しても、ニーズは満たしますが余計なお金が無駄になることでしょう。

それは介護保険制度において同様です。
介護サービスの利用には条件もあり、介護を必要とするお年寄りが複雑な介護保険制度の仕組みをよく理解した上で、自分に最適な介護サービスを選択するのは難儀です。
そこで、利用者の立場に立って一緒に考えてくれる＊＊＊＊＊＊＊＊介護支援サービスが必要になるわけです。
そして、この介護支援サービスの中心的役割を果たすのが、皆さんが目指している＊＊＊＊＊＊＊介護支援専門員(ケアマネジャー)です。

このように、利用者のニーズに即して、保健・医療・福祉と分かれている各種サービスを総合的、一体的、効率的に提供するサービスを＊＊＊＊＊＊＊＊ケアマネジメントと呼び、介護保険制度では＊＊＊＊＊＊＊＊介護支援サービスで実施されます。

この介護支援サービス(ケアマネジメント)の詳細については別の論点で説明しますが、次の4つのサイクルから構成されています。

仕事	内容
＊＊＊＊課題分析	利用者の生活において解決しなければいけない課題(ニーズ)を見つけます。
ケアプランの作成	課題を解決するためのケアプラン(介護サービス計画)を作成します。
各機関との調整	計画の実施がスムーズにいくように、各種機関と調整や仲介をします。
＊＊＊＊＊＊モニタリング	計画が実施を把握するとともに、評価をします。

介護保険制度の基本的理念や目標といった基本的なところを学習していきます。
これらは抽象的な表現が多いですが、基本的理念に沿って具体的に介護保険サービスが作られています。
老人保健福祉審議会の最終報告で取り上げられた次の点を中心に見ていきましょう。

No.	基本的理念・目標	内容
1.	高齢者介護に対する＊＊＊＊＊社会的支援	介護に必要な支援を、社会制度的に提供します。そのため、利用者のプライバシーに深く関与するため、人格などに十分配慮する必要があります。
2.	高齢者自身による＊＊選択	ケアマネジメントは利用者の意思決定をサポートしますが、どのサービスをどのように利用するかの選択は利用者にあることを念頭に置かなければなりません。
3.	＊＊在宅介護の重視	「施設から介護へ」と言われますが、限られた福祉財源を有効に使うためのみならず、住み慣れた家での介護は利用者にとっても負担が少ないといえます。
4.	＊＊予防・リハビリテーションの充実	QOL(生活の質)を維持・向上するため、なるべく介護を必要としないように予防やリハビリテーションを重視します。
5.	＊＊総合的、＊＊一体的、＊＊効率的なサービスの提供	各種サービスの中には重複するものも少なくありません。過不足なく適切なサービスが受けられるようにしなければなりません。
6.	市民の幅広い参加と＊＊＊＊民間活力の活用	介護保険制度という公の制度以外にも、民間で提供しているサービスの利用も検討する必要があります。また、市民が介護保険制度に参加する窓口も設けられています。
7.	＊＊＊＊社会連帯による支え合い	高齢者を社会全体として支えていこうという考えで、公的年金制度と同じような考えです。
8.	＊＊安定的かつ効率的な事業運営と＊＊＊地域性の配慮	保険の財政基盤を安定させ、また地域ごとの特色にあったサービスを市町村が主体となって提供しています。